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東京地方裁判所 昭和49年(レ)1号 判決 1974年5月29日

被控訴人 株式会社富士銀行

理由

一  1 昭和三一年九月二四日、元金一〇万円、期間六ケ月、元利金支払日昭和三二年三月二四日、預金名義人訴外会社とした割増金附定期預金契約が締結されたこと、右定期預金契約の受入銀行が被控訴銀行であることは当事者間に争いがない。

2 そこで、本件定期預金契約の預金者が控訴会社であるか訴外会社であるかにつき検討する。

成立に争いのない甲第一号証の一、二および控訴人代表者本人尋問の結果によれば、控訴会社の代表者山田勝治は訴外会社代表者宮下静一郎の依頼を受けて同人と共に昭和三一年九月二四日被控訴銀行荻窪支店に赴き、同所で右宮下に対し金一〇万円を貸し渡し、宮下は、訴外会社代表者印を届出印として右金一〇万円を同支店に預け入れ、同支店から交付された訴外会社宛の定期預金証書裏面の元利金受領者氏名欄に訴外会社代表取締役宮下静一郎の記名印と右届出にかかる代表者印とを押捺して、これを控訴会社に対する前記金一〇万円の借金の担保の目的で控訴会社代表者に預けた事実が認められる。右認定を覆し、本件預金は控訴会社が訴外会社の名義を使用して自己のためになしたもので被控訴銀行の担当者もそのことを了承して控訴会社に対する支払を約した等特段の事情を認めるに足りる証拠はない。してみれば、本件定期預金の預金者は訴外会社というべきであつて、控訴会社とは認められない。

二  控訴人は、昭和三一年九月二四日、訴外会社から本件定期預金債権の譲渡を受けた旨主張するが、前記認定のとおり、控訴会社が貸金担保の目的で本件定期預金証書の交付を受け、本件預金債権に対する訴外会社の支配を事実上制約したことは認められるけれども、本件定期預金契約上譲渡禁止の特約の存することは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一号証の二によれば右約定は預金証書に明記されていて控訴会社代表者もこれを知つていたものと推認されること、控訴人代表者尋問の結果によつても、控訴会社の代表者は本件預金の支払日到来後も、訴外会社による前記一〇万円の債務の弁済を待ち、本件預金の支払請求は数年後までしていないことが認められること等を勘案すると、前記認定よりさらに進んで、本件定期預金債権の譲渡がなされたこと(まして、被控訴銀行の担当者が当時右債権譲渡につき異議を留めず承諾を与えたこと)は、本件全証拠によつてもこれを認めるに足りないところといわなければならない。

三  以上の次第であるから、被控訴人のその余の主張につき判断するまでもなく控訴人の請求は理由がなく、原判決の結論は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却

(裁判長裁判官 横山長 裁判官 山本矩夫 一宮なほみ)

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